« 脳の計測 | トップページ | ブラジルのスラム »

2008年8月20日 (水)

彼らの心を壊したのは何か?~脳と環境ホルモン・少年犯罪の性差についての生物学的観点からの一考察~

一回生のときのレポートだからなぁ。素人だし。結論も酷い。生物学的な部分も思い違いはかなり多いと思うが、とりあえず。

彼らの心を壊したのは何か?~脳と環境ホルモン・少年犯罪の性差についての生物学的観点からの一考察~(2000年)

はじめに

 最近、これまでの常識では考えられないとされる「少年犯罪」が続いている。これは字面の通り、少年たちによる犯罪である。なぜ今、少年たちがキレやすくなっているのか。「いや少女たちもキレている。ただキレる方向性(表現)が違うだけだ」という指摘もあるだろう(ex.援助交際やガングロメーク)。また、青少年の暴力事件(人に対する暴力を伴う犯罪、すなわち殺人・強盗・暴行・傷害・恐喝)の推移をみると、1950年代末をピークに男子少年のそれが急激に減少の傾向を示したのに比べ、逆に女子少年のそれは10倍前後の高い伸び率を示しているという特徴もある。(「犯罪白書」1996年版) しかしそれでも女子少年の暴力事件数は男子少年のそれの10分の1程度であるし、何より今、世間を騒がせる異常な「犯罪」は、文字通り「少年」による犯罪なのである。異常な犯罪が増えていることについては教育の問題、社会の問題、家庭の問題と様々な観点からの意見が述べられている。しかし、その男女差についてはあまり議論されていないように思う。私は別の科目においても少年犯罪における性差の問題を取り上げ、社会学的観点からのレポートを提出したが、何か言い忘れたような後味の悪さが残っている。そこで今回は、生物学的観点から「環境ホルモン」「脳」というキーワードを当てはめてもう一度考えてみたいと思う。

少年たちのメス化現象

 環境ホルモンが生殖機能に与える影響については、動物界において、あらゆるところで顕在化しており検証され証明されつつある。人間の男性性においては、女性ホルモンであるエストロゲンに似た化学物質DESが内分泌撹乱物質としてあげられており、昨今の精子の数の減少や男性生殖器の異常、女性性比率の増加の原因として最も有力と考えられている。ちなみに現在、日本では家畜等の成長促進剤として使用されているが、いまだ環境調査の対象にはなっていない。先に述べた暴力事件の急激な減少からもわかるように、少年たちの多くは、その日常において、昔私が学生だった頃(校内暴力が吹き荒れた時期)のように粗野で好戦的ではもうなく、繊細で優しい生き物になっている。このことは生殖系をターゲットにした環境ホルモンが、「行動に与えた影響」と考えてもいいだろう。

 マブリーによる実験では、妊娠15日目のラットに「2,3,7,8-四塩化ダイオキシン」を微量食べさせ、生まれたオスへの影響を調べた。結果、成熟後の精子を作る能力の減少が見られたことは言うまでもなく、オスらしくない性行動が観察されたという。また有名なフォン・ザールの研究によると、男性ホルモンであるテストステロンの影響を受けたメスは、出生後、オスに特有の攻撃的行動を示したという。

 ここでいえるのは、性差はホルモンから来ているということである。当たり前のことと言われるかもしれない。しかし、それが生殖系に影響を与えるだけではなく、成育中の脳や神経系や免疫系にも影響を与え、出生後の身体や性格や行動をも左右しているのだ。さらに重要なことは、発生段階でのわずかなホルモン環境の違いが大きな影響を及ぼすということ。大人より子ども、子どもより胎児ほど影響を受けやすいということ。ホルモンを浴びる時期によっては、元に戻らない永久的な損傷を受けることが動物実験で証明されているということだ。

 人類の便利な生活のために化学物質が使われだしたのは、ほんの50年前からである。現在、自然界には存在しえない化学物質は約10万種、内分泌撹乱作用が疑惑視されているのが70種弱、そして日本の環境庁が調査を始めたのがまだほんの数種である。環境ホルモンによる永久的な損傷は、「生殖系」といった目にみえる部分だけでなく、すでに私たちの「脳・神経系」を犯しはじめているのだろうか。

メス化した少年たちがキレるとき

 総体的に見て暴力的でない男性が増えているのは、女性性にとってはむしろ喜ばしいことと言えるかもしれない。穏和で優しいままであれば何の問題も支障もないのだ。しかしながら、「ふつうの少年による犯罪」とタイトルされるように、昨今の少年犯罪には、ふだん穏和で優しかった少年の「まったく突然の凶行!!」という特徴がある。「ほんとうにふつうの少年だったのか」という検証はおいておくとして、見た目には血の気の少ない穏和な少年が突然攻撃的になるのはどうしてなのだろう。もちろん、見るからに血の気の多い暴力的な男性であっても始終攻撃的であるわけではない。(もしそうであれば精神科の病気の症状である)。

 まず一般的に男性が引き起こす攻撃性の要因として、男性ホルモンの過剰による攻撃性の高まりがあげられる。ラット,マウスなどの縄張り形成や攻撃行動は雄に固有の性ホルモン依存性行動である。詳しくいうと男性ホルモンが脳内で芳香化されて生じるエストロゲン(女性ホルモン)がエストロゲン受容体に結合し核に移行,特定の遺伝子の転写を促進させて男性に攻撃行動があらわれるとされる。すなわち行動の性差は精巣または卵巣由来の性ホルモンの相違だけではない。例えば性腺を摘出し、異性の性ホルモンを投与しただけでは行動上の性差は転換しないが、脳の中にあるエストロゲンα受容体をノックアウトされた雄マウスにおいては攻撃行動が欠如することが実験によっても判明している。逆にエストロゲンが女性の脳に作用すると受容行動を起こすことが知られている。エストロゲンα受容体ノックアウト雌マウスは誘惑行動・受容行動のいずれもまったく示さないのである。

 このことから、ヒトの脳内においても、「攻撃性の化学物質」があり、それが伝達されているわけではなく、化学物質を攻撃性に変える「メカニズム」があるということだろう。さらにそれは、雌雄の脳では現れ方がまったく異なることが示されているといえる。 

 以上のことから、ふつうの穏和な少年が起こす異常な犯罪の原因のひとつには、やはりニセエストロゲンである環境ホルモンDESが考えられるのではないかと思う。身体的特徴・生殖機能・性行動においてメス化を促進させるDESは、男性性の脳・神経系にとっては攻撃性を促進させる。今までにない量のDESを、おそらく胎児の頃から摂取しつづけている少年たちの脳内環境は、はなから異常な状態にあり、ちょっとした刺激(心的外圧)で攻撃性のメカニズムが制御不能に陥り、暴走してしまうということではないだろうか。すなわち見た目は穏和で華奢なイメージでありながら、脳のなかはまさに一触即発状態なのである。もちろん攻撃性に関わりのある物質はこれひとつではない。例えば最近の研究では、脳内の特定部位のセロトニン濃度が多いと攻撃性が高まるとの報告がされている。またセロトニン受容体はある特定の物質と結びつくと悪心・嘔吐のメカニズムを引き起こす。近頃の子どもが頻繁に「ムカつく」と言うことはよく知られているが、もしかしたら子どもたちの体内では何か生化学的な変化が起きているのかもしれない。

少年たちはムカついてからキレる~彼らの心を理解する方法は?

 行動には何らかの意識、すなわち心が媒介される。攻撃がどんなに突発的であっても条件反射のごとくスイッチが入るわけではない。行動はすべて中枢神経系で制御され、認識→決定→行動の順番を踏む。攻撃に移る前には、まず怒りや悲しみといった意識を脳は認識するはずなのだ。しかしどうやって脳のニューロンの中のイオンの流れや電流が、冷たいとか痛いとかいう主観的世界の感覚を生みだせるのだろう。少年たちの神経生理を調べて、化学物質をつきとめて、ニューロンの信号を読み取って、メカニズムを理解すれば、それがどの程度の意識なのか、すなわち少年たちがどんな心持ちなのかを私たちも確認することはできるのだろうか。いや、できない。現在のところ、心のなかの絵は彼らの言語による報告なしには知り得ない。いわゆる「クオリア」の問題である。簡単な例をあげよう。ヘビースモーカーがいる。彼は今、禁煙に挑戦している。ニコチンはアセチルコリンの代わりにニコチニック・アセチルコリン受容体に結びつく。それは脳の中の報酬系なので欠乏するとイライラや不安感が起こるのだという研究結果がある。研究結果の通りに、彼はイライラや不安を訴える。しかし喫煙の習慣がない私にはそれがどの程度のイライラなのか、不安なのかが分からない。そのヘビースモーカーからどんなに言葉を尽くされても、ほんとうに理解できるとは言えないのではないかということである。逆を言えば、「イライラする」というような話し言葉を使わず、彼の脳の中のイライラを感じている領域と、私の脳の中の同じ性能をもつ領域を神経線維で直接つないだら、その度合いがすぐにわかる。他人のほんとうの心を理解するには、実はこれぐらいの一体化が必要だろうと私は思っている。

おわりに

 昨今の少年犯罪について「理解できない」という発言をする大人は、無責任だと必ず非難を浴びる。しかし私は「わかるわかる」と物分かりのよい事無かれ主義の大人でいるより、理解できなければそう言い、「どこが理解できない」というしっかりした認識をもつことが必要なのではないかと思う。私は今後、「子どもの心の発達」について知識を深めたいと思っているが、数年後よく理解したと思っても、それは永久に完璧ではないということを肝に命じておきたい。

 話は変わるが、凶悪な少年犯罪における精神鑑定は現在精神分析的手法が採られているかと思うが、まず脳内環境の検査をすべきであると私は思う。彼らはもしかすると、どこかの遺伝子を、あるいは神経回路を欠損したミュータントかもしれない。そうであるなら犯罪を納得せざるを得ないし(第3者としての納得ではあるが)、彼らは脳研究における最高の研究対象になり得る。これは彼らの脳を無視して厚生させようとするよりも実益的な治療ができるだろう。そして、それはむしろ彼らにとって人権保護につながるのではないかと思う。

« 脳の計測 | トップページ | ブラジルのスラム »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 脳の計測 | トップページ | ブラジルのスラム »

2020年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
無料ブログはココログ

ツミボンの日々