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2008年8月13日 (水)

記者の目:反核「微力だけど無力じゃない」=錦織祐一 - 毎日jp(毎日新聞)

リンク: 記者の目:反核「微力だけど無力じゃない」=錦織祐一 - 毎日jp(毎日新聞).

さすがに良い文章。どうぞ書き続けてください。

「若い世代は『微力だけど無力じゃない』を合言葉に、核兵器廃絶の署名を国連に届ける活動を続けています」。9日、長崎市で開かれた平和祈念式典の平和宣言で、田上富久・長崎市長が報告した。被爆地・長崎の生徒たちが中心になって始まった「高校生1万人署名活動」と、スイスの国連欧州本部(ジュネーブ)に署名を届ける「高校生平和大使」のことだ。私自身、彼ら高校生にこうべを垂れる思いを何度もしただけに、「微力だけど無力じゃない」の言葉に、あらためて深くうなずいた。

 核廃絶の「1万人署名活動」は今年で8年目。これまでに約300人が参加した。国内各地にとどまらず、在外被爆者を通じて韓国、ブラジルにも広がり、昨夏までの7年間で国連に届けた署名は36万人分を超えた。

 被爆3世もいるが、大半は「何かやってみたい」という動機で参加する。日曜ごとに長崎市中心部などに立ち、道行く人から、ひたすら署名を集める。ただそれだけの活動だが、「参加者は日を追うごとに、目に見えて成長していく。顔つきが変わってくるんです」と、指導する元小学校教諭で被爆2世の平野伸人さん(61)は言う。なぜ、そんな力を持つのだろう。

 長崎県立佐世保西高3年の江里口泰子さん(18)は昨年1月、同県平戸市での署名活動に「軽い気持ちで」参加した。そこで長崎市から来た高校生たちの熱心さに打たれ、「地元の佐世保市にも活動を広めたい」と同7月から月1回、街頭に立つようになった。

 だが、「被爆地ナガサキ」といっても、8月9日に大半の人が黙とうするのは長崎市内だけ。被爆問題への関心は、同じ県内でもかなりの温度差がある。佐世保の街頭に立った江里口さんはまず、黙殺されるつらさを経験する。「核兵器で日本は守られている」「お前たちは何も分かっていない」と怒鳴られ、涙を流したこともあったという。

 似た経験は、多くの高校生が味わっている。

 長崎市の私立活水高3年、尾田彩歌さん(18)は「やっても何も変わらない」「意味ないとよ」と何度も言われた。「先日、若い男の人に、初めて『賛同できません』と言われました。悲しかったんですが、無視されるよりはいいかな、と思っています」。江里口さんも一時期、「平和には核が必要なんだろうか」と悩んだ。しかし、平野さんは「無視され、批判され、悩むことが大切だ」と話す。

 江里口さんは街頭に立ち始めて8カ月後の今年3月、1万人署名活動の一員として韓国・釜山市に渡った。「原爆投下は日本が招いた結果だ」「まず植民地支配の責任を取れ」。釜山駅前での署名活動は怒声を浴びせられ、追い払われた。

 複雑な思いを抱きながら訪ねた在韓被爆者、故・崔季※(チェゲチョル)さん宅で、04年に亡くなった崔さんの火葬後に残った腰の人工骨を手渡され、遺族の話を聞いた。

 《長崎市で被爆した崔さんは韓国への帰国を理由に日本からの健康管理手当を打ち切られ、韓国側からも「日本側の問題」として援護の手は差し伸べられなかった。股(こ)関節の炎症で人工骨を埋め込んだが、その痛みに苦しみ、晩年は寝たきりだった。困窮にあえぐ家族に、崔さんは「人工骨は高価な金属に違いない。私の死後に売って家計の助けにしてほしい」と遺言して亡くなった》

 ずしりと重い人工骨。江里口さんはその時初めて、自分が取り組む運動の重みを知った。「日本は憎まれているかもしれない。でも、国と国とが理解し合って前進しなければ、核兵器の問題は解決しない」と。

 同じ高校生が休日をつぶして街頭に立っている。自分が何もしないことへの後ろめたさや若者らしい連帯感から署名に参加し、満足感を得る。しかし社会はそんなに甘くない。自分が正義と信じることを、誰もがそうは思っていないということを、骨身に染みて知る。それでも街頭に立ち続けることで、彼らは大人になっていく--平野さんが言う「成長」とは、つまりはそういうことではないのか。

 6日の広島原爆の日から15日の終戦記念日へと続く「慰霊の夏」は、国内外や次の世代に戦争の愚かさを伝え続ける決意を新たにする日々だ。が、季節を問わない高校生たちの街頭署名は、「8月ジャーナリズム」と揶揄(やゆ)される私たちマスコミに、「それでいいのですか」と問いかけているように感じる。書き続けなければ、と思う。

 江里口さんは今月19日、「平和大使」として、自ら集めた署名を国連欧州本部に届ける。「微力だけど無力ではない」と信じて。(長崎支局)

 ※はさんずいに「徹」のつくり         

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