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心と行動の遺伝学

心と行動の遺伝学
ブルーバックス。遺伝子が心を操るという裏表示のコマーシャルなコピーは置いておくとしても、なかなか思い切った説が展開されていると思う。

著者の専門は行動遺伝学・教育心理学。理系と文系を跨ぐ経歴だが、内容は理系に軸足。遺伝か環境かという永遠の興味深い問いに双生児法による研究で挑んでいる。

印象に残った話として。
「時間的遺伝子」遺伝の影響は常識的に考えられるのと逆で時間とともに大きくなる。これは人間行動遺伝学の知見としてはほぼスタンダードな説。ただし認知能力に特殊な現象である。新しい遺伝要因(時間遺伝子)にスイッチが入るのが2〜3歳と7歳のとき。神経生理的にも認知機能が大きく変わる時期と重なる。

認知心理学の知見である「状況に埋め込まれた学習」を認めつつも、能力の個人差は環境や状況の差だけでは説明できない。優秀な仕立屋にも出来の悪い見習いはいるし、逆にたいしたことのない親方のところでいい職人が育つことも少なくない。この個人差を生み出す要因を見極めようとするのが行動遺伝学なのだと。遺伝と環境は分けられないと達観する相互作用説は中立のお利口さん説だと切り捨てる。行動遺伝学的に遺伝要因をコントロールした研究を行うことが重要だと力説。ただし倫理の問題は棚上げ。

特定の原因遺伝子との単純な因果モデルはない。組み合わせによって効果が異なってくる。足し算ではない交互作用の効果。ゲシュタルト心理学でいう、二つの要素が組み合わされ、全体として要素に還元出来ない新しい効果が作り出されるように。

しかし、とにかく饒舌である。饒舌過ぎて疲れてしまう。同時期に借りた『身体の病と心理臨床-遺伝子の次元から』の淡々とした記述と比べてしまうので尚更。

いや、恐らくは私自身の問題。能力と遺伝に関するお得なチップスを無意識に見出だそうとしている。それは著者の意図するところではないのだろう。

終わりの方にまとめられた「遺伝概念をめぐるさまざまな誤解を解く」の章だけ読めば、著者が何を主張したいかが手っ取り早くわかるかも。

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